2025年9月28日日曜日

武骨に文字を並べるところからスライドをつくる

 以前の僕だったら、スライドの背景にどんな色を置くべきか、ロゴをどの角に収めるのか、フォントをゴシックにするか明朝体にするか、そんな細かいことばかり気にしていただろう。見栄えを整えることに時間を使って、肝心の中身はどこか置き去りにされてしまう。

けれど今は違う。結局のところ大事なのは中身だ、という結論にたどり着いた。ロゴがどうだとか、背景がどうだとか、観客の記憶にはほとんど残らない。残るのは数字やグラフと、それをどう語ったかだけだ。

だから僕は、白い背景に黒い文字を、ただ武骨に並べていくことにした。余計な飾りはない。そこにあるのは事実と解釈、それだけだ。まるでタイプライターで打った原稿用紙を一枚ずつスクリーンに投影していくようなものだ。

シンプルさにはある種の静けさがある。そして静けさは、聞き手をかえって強く引き寄せることができるんじゃないか。少なくとも今は僕はそう思っている。

先頭打者ホームランというわけにはいかなかったけれども、長崎の光の中で未来の背中を追い始めた

朝いちばんの発表が終わった瞬間、胸の奥の霧がふっと晴れた。 半年分の緊張が、出島メッセの裏口にそっと置き忘れてきた荷物みたいに、気づけばそこにない。 同じ会場では、僕より二回りほど年上の先生たちが、外来と生活のすきまから丁寧に紡いだ研究をまっすぐ発表していた。 白い光の中で揺るが...