2025年6月11日水曜日

ピースを埋める

とても地味な作業だ。

ひとり終えては、椅子から腰を上げ、少し身体をひねる。

ひとり終えては、本のページをめくり、指先の乾きを感じる。


データセットをつくる。

この作業は、どこかパズルに似ている。


縦軸には患者の名もなきID。

横軸には、変数たちの沈黙。

それらの交点に、数字をひとつずつ埋めていく。

抗体の有無、罹病期間、ステロイドの量、LDL、CRP、…

そのひとつひとつが、誰かの時間の痕跡だ。


目を凝らし、過去の記録に触れながら、

空白のセルを埋めるたびに、わずかな充実が灯る。

数字はただの記号じゃない。

それは、診察室の沈黙の中で交わされた視線のひとつだ。


全体のちょうど半分が終わった。

まだ道のりは遠いけれど、

こうして少しずつ、見えない全体像の輪郭が浮かび上がってくる。


データという名のパズル。

ピースは静かに、しかし確実に、所定の場所へと嵌まりはじめている。


【2025年臨床リウマチ学会総会へ向けて-15】

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 内科地方会から当日のプログラムを知らせるメールが来た。 今回、座長を務めるのは、大学病院時代にともに汗を流して笑いあいながら働いた同期だった。世間は狭いなと笑った。 僕はクリニックを構え、研修医や若手の先生方に混じって発表する側。一方、彼は大学に残り、教授たちと肩を並べる座長と...