2025年5月21日水曜日

対象者の選定②:反実仮想

  「もしこの人が別の薬を使っていたら─」

たとえば「アクテムラ」や「ケブザラ」という薬を使っている人たちを集めて、どんな変化があったのかを比べる。それだけでは、ほんとうにフェアな比較にはなりません。

僕たちが本当に知りたいのは、

「この人が別の薬を使っていたら、どうなっていただろう?」という問い─

つまり、反実仮想だからです。


同じ薬を使っているように見えても、ある人は最初にこの薬を使い、ある人は別の薬のあとにたどり着いている。それだけで、体の中で起きていることは、まったく違ってきます。


だから僕は、「最初にアクテムラやケブザラを使った人」だけを対象に、慎重に比較を始めています。

もしもこの人が、別の薬を選んでいたら──その「もしも」を真剣に考えることこそ、未来の医療に近づくための、静かな第一歩なのだから。


【2025年臨床リウマチ学会総会へ向けて-10】

先頭打者ホームランというわけにはいかなかったけれども、長崎の光の中で未来の背中を追い始めた

朝いちばんの発表が終わった瞬間、胸の奥の霧がふっと晴れた。 半年分の緊張が、出島メッセの裏口にそっと置き忘れてきた荷物みたいに、気づけばそこにない。 同じ会場では、僕より二回りほど年上の先生たちが、外来と生活のすきまから丁寧に紡いだ研究をまっすぐ発表していた。 白い光の中で揺るが...