2025年11月28日金曜日

長崎へ向かう朝、声に出す。

まだ早い時間のはずなのに、発表原稿の文字はずいぶん前から起きていたように見える。

僕は喉をひとつ鳴らして、ゆっくりと言葉を声に出してみる。
ここ1週間、似たようなフレーズを繰り返してきた。
積み上げてきたものの重さが、声の振動のどこかに宿っている気がする。

今日は空が白がる前に、通しで何度も練習しておきたい。
16時には外来を締めて羽田へ向かう。
本来なら明日も患者さんを診ていたはずで、そのことが朝の静けさの中で、かすかな後ろめたさとして胸の隅に漂っている。
けれど、ここまでやってきた半年を思えば、この時間は必要なものなんだと、自分に言い聞かせる。

声に出すたびに、原稿のリズムが微妙に変わる。
数字の並びが少しだけ体の深いところに沈んでいく。
外はまだ淡い光のままで、その光が部屋の空気を薄く揺らしている。

長崎までは、あと少しだ。そう、今年の臨床リウマチ学会は長崎なのだ。
発表そのものより、ここまでの道のりのほうがむしろ長かった。
そのことを確かめるように、僕はもう一度、丁寧に一行目から声に出して読み始める。

同期が座長を務める日、発表者は僕だった

 内科地方会から当日のプログラムを知らせるメールが来た。 今回、座長を務めるのは、大学病院時代にともに汗を流して笑いあいながら働いた同期だった。世間は狭いなと笑った。 僕はクリニックを構え、研修医や若手の先生方に混じって発表する側。一方、彼は大学に残り、教授たちと肩を並べる座長と...