来週は大正製薬での研修会。社員さんに向けた社内講演が控えている。
まだ空が白んでいるうちに机に座り、スライドを一枚ずつ直していく。
鳥の声がして、外はもう夏の匂いがした。
患者さんでもなく、薬剤師さんでもなく、お医者さんでもなく、製薬会社の社員さんたちに話すためのスライド。
相手が変わると、選ぶ言葉も変わっていく。
昔は自分が評価されたい気持ちで、学会用のスライドを必死に作っていた。
文献の引用をしまくり、論に穴がないか検証に余念なく、スライドを構成する。
原稿を完璧に仕上げて読み上げたり、丸暗記したりして発表していた。
でもいろいろな場所で発表を重ねるたびに、聴くたびに、
「なんか違う」と心のどこかで感じていた。
自分の発表はパッチワークみたいな気がしていた。
今が正解かはわからない。
ただ、だんだんだんだん、自己満足ではないスライドをつくれるようになってきた気がする。
聴講者が聴きたいことを想像し、それに対して僕が日々感じていることを、自分なりに消化したかたちでスライドをつくる。
目の前の人に向けて、その場で出てきた言葉で話す。
自分の消化していない文献のパッチワークはもうやめたんだ。
どんな場所なのか、だれが聴講者なのか、なにが聴きたいのか。
そして、僕が話す理由。