最近、患者さんに「先生、コレステロールの薬、やめられると思ったのに、上がってますけど…?」と、残念そうに言われました。その方は関節リウマチで、炎症を抑える新しい薬(IL-6阻害薬)を使いはじめたばかり。
痛みはすっと楽になった。朝のこわばりもなくなった。でも、血液検査を見てみると――LDLコレステロール、つまりいわゆる“悪玉”が、しっかりと上がっている。
これは決して珍しい現象ではなくて、僕たちの間では「リピッドパラドックス(Lipid paradox)」と呼ばれていたりします。
炎症が強いと、コレステロールは抑え込まれて見える。逆に、炎症が静まると、体が本来の姿を取り戻すように、コレステロールがふわっと上がってくる。
体って、ほんとうに不思議です。
今回は、この現象について、ちゃんと数字で確かめてみようかなと、今、小さな研究を考えています。
といっても難しいことをするわけではなく、
「この薬を使うと、平均でどれくらいコレステロールが上がるのか?」
「どれくらいの期間で変化が落ち着くのか?」
を、のばなクリニックで診ている患者さんの記録を振り返ってまとめてみようという、ささやかなものです。
もちろん、コレステロールが上がったまま放っておいていいという話ではなくて、炎症が落ち着いたあとの「次の課題」として、心臓や血管のリスクを見直していくことも、とても大切ですよね。
「今のあなたにとって、このコレステロールは、本当のあなたなのコレステロールなのか。」――それを判断する材料のひとつとして、この研究が役に立てばいいなと思っています。
ぼんやりと、そんなことを考えていました。
【2025年臨床リウマチ学会総会へ向けて-02】